日本酒の未来を決める聖域「麹室(こうじむろ)」とは?その役割と酒造りの秘密を徹底解説!

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日本酒のボトル裏にあるラベルや、酒蔵のホームページを見ていると、時折目にする「麹室(こうじむろ)」という言葉。

「なんとなく、お酒を造る部屋のことかな?」と思いつつも、具体的にどんな場所で、なぜそれほど重要視されているのか、詳しく知らないという方も多いのではないでしょうか。

実は、麹室は酒蔵のなかでも「最重要の聖域」と呼ばれる、特別な部屋なのです。

日本酒造りには「一麹、二酛、三造り(いちこうじ、にもと、さんづくり)」という有名な格言があります。これは、酒造りにおいて何よりも「麹(こうじ)造り」が最も大切であるという意味。そして、その命とも言える麹を育てる場所こそが「麹室」です。

「なぜ、普通の部屋ではダメなの?」 「麹室のなかでは、一体何が行われているの?」

そんな疑問をお持ちのあなたへ。この記事では、日本酒の味わいを決定づける麹室の秘密や役割、そこで繰り広げられる蔵人たちの熱いドラマを徹底解説します。

麹室の裏側を知ると、今夜飲む日本酒の味わいが何倍も深く、そして愛おしく感じられるはずです。それでは、知られざる酒造りの心臓部へ、一緒に足を踏み入れてみましょう!

もくじ

そもそも日本酒造りに欠かせない「麹室(こうじむろ)」とは?

日本酒の酒蔵を訪れたり、酒造りのドキュメンタリーを見たりすると、必ずと言っていいほど登場する「麹室(こうじむろ)」。一言で言えば、麹室とは日本酒の味の決め手となる「米麹(こめこうじ)」を育てるためだけの専用の部屋のことです。

酒蔵のなかでも最も奥深い場所に位置しており、関係者以外は滅多に立ち入ることができない「聖域」のような空間となっています。

日本酒の原材料は、主に「米・水・麹」の3つ。このうち、米のデンプンを糖分に変えるという極めて重要な大役を担っているのが麹です。蒸したお米に「麹菌(こうじきん)」というカビの仲間を付着させ、お米の芯まで繁殖させることで、良質な米麹が完成します。

この「麹菌をお米に繁殖させるプロセス(=麹造り)」には、厳密な温度と湿度の管理が欠かせません。そのため、一般的な仕込み部屋とは完全に隔離し、まるで「お米の保育器」のように最適な環境をキープできるように設計された特殊な部屋、それこそが「麹室」なのです。

なぜ専用の部屋が必要?麹室が果たす重要な役割

「お米に麹菌をつけるだけなら、広い作業場でも良いのでは?」と思うかもしれません。しかし、日本酒造りにおいてそれは絶対に不可能です。なぜなら、麹菌は非常にワガママでデリケートな「生き物」だからです。

麹室が独立した専用の部屋として存在するのには、主に3つの切実な理由があります。

  • 「高温多湿」という特殊な環境を維持するため 麹菌が活発に活動し、お米の芯まで根を張るには、一般的に30℃〜35℃前後の室温と、60%以上の高い湿度が必要です。冬の厳しい寒さのなかで仕込みを行う酒蔵において、この「常夏のような環境」をピンポイントで作り出し、24時間維持し続けるには、断熱性の高い専用の小部屋が不可欠なのです。
  • 「麹の自己発熱」をコントロールするため 麹菌はお米を食べて繁殖する際、自ら熱を発します。放っておくと温度が上がりすぎてしまい、自分自身の熱で麹菌が弱ったり、死滅したりしてしまいます。麹室は、単に温めるだけでなく、時には熱を逃がし、時には保湿するといった、ミリ単位の緻密なコンディション調整を行うための「司令塔」の役割を果たしています。
  • 「雑菌」という天敵から守るため 酒蔵の中には、野生の酵母や乳酸菌、あるいは納豆菌といった他の微生物も存在します。もし普通の部屋で作業をすれば、こうした雑菌が米麹に混じり、腐敗や異臭の原因になってしまいます。麹室は、外部の菌をシャットアウトし、麹菌だけが健やかに育つための「クリーンルーム」でなければならないのです。

このように、麹室は単なる作業場ではなく、デリケートな麹菌が最高のパフォーマンスを発揮できるように整えられた、究極の「育成シェルター」と言えます。

構造はどうなっている?独特な構造と「杉」の秘密

普段は固く扉が閉ざされている麹室ですが、その内部には酒造りの知恵が詰まった独特の世界が広がっています。

伝統的な麹室に一歩足を踏み入れると、壁から天井まで一面に「杉の木」が張られており、まるで美しい木造のサウナやコテージのような空間が広がっています。なぜ、数ある木材のなかからあえて「杉」が選ばれるのでしょうか?そこには、天然のハイテク素材とも言える杉の驚くべき秘密があります。

  • 天然の「エアコン」となる優れた調湿効果 杉の木は、周囲の湿気が高くなると水分を吸収し、乾燥してくると蓄えた水分を放出するという、優れた「調湿機能(吸放湿性)」を持っています。これにより、麹室内の湿度が急激に変化するのを防ぎ、麹菌にとって最適な環境を自然にキープしてくれます。
  • 熱を逃がさない高い保温性 杉は細胞のなかにたくさんの空気を含んでいるため、断熱性と保温性が非常に高い木材です。冬の厳しい寒さが続く酒蔵のなかでも、室内の温かい熱を外に逃がさず、一定の温度を保つ役割を果たしています。
  • お酒に寄り添う「爽やかな香り」 杉の清々しい香りは、日本酒の持つ香りを邪魔せず、むしろ心地よい清涼感を与えてくれます。古くから樽酒(たるざけ)に杉が使われてきたことからも、日本酒と杉の相性の良さは歴史的に証明されています。

現代の進化系!ステンレス製の麹室も登場

一方で、近年では伝統的な木造ではなく、病院の手術室やクリーンルームのような「ステンレス製」の麹室を導入する酒蔵も増えています。

木造の麹室は手入れを怠ると不要な雑菌やカビが繁殖しやすいというデメリットがありますが、ステンレス製は洗浄や殺菌が極めて容易で、衛生管理が圧倒的に楽になります。また、コンピューターと連動した最新の空調設備を組み合わせることで、1度・1%単位での超精密な温度・湿度コントロールが可能となり、狙い通りの高品質なお酒を安定して造れるという強みを持っています。

昔ながらの職人の勘を活かす「杉の麹室」と、現代の科学技術を結集した「ステンレスの麹室」。どちらも「最高の麹を育てたい」という情熱が生んだ、酒蔵こだわりの空間です。

「一麹、二酛、三造り」日本酒造りで麹室が最も重要視される理由

日本酒の業界には、古くから酒造りの優先順位と重要性を表した「一麹、二酛、三造り(いちこうじ、にもと、さんづくり)」という有名な格言があります。

  • 一、麹(こうじ): 何よりもまず「麹造り」が一番重要
  • 二、酛(もと): 二番目に、お酒の母体となる「酵母(酒母)」を育てるプロセスが重要
  • 三、造り(づくり): 三番目に、タンクにすべてを合わせて発酵させる「仕込み」が重要

この言葉が示す通り、日本酒造りにおいて圧倒的な第1位に君臨するのが「麹造り」であり、それを執り行う「麹室」が酒蔵のなかで最も重要視されるのは当然のことなのです。では、なぜそれほどまでに麹が全体の運命を握っているのでしょうか?

理由1:米の「溶け方」をコントロールするから

日本酒は、米のデンプンを麹の力で「糖」に変え、その糖を酵母が食べて「アルコール」に変えることで造られます。 麹室で仕上がった麹の出来栄えによって、お米がタンクのなかで「どのように、どれくらい溶けるか」が決まります。お米が溶けすぎると雑味の多い重い酒になり、逆に溶けなさすぎると味が薄く物足りない酒になってしまいます。つまり、お酒の「骨格(ボディ感)」は麹室のなかで決まるのです。

理由2:酵母の「元気度」を左右するから

格言の二番目にある「酛(酒母)」や、三番目の「造り」の主役は、アルコールを生み出す「酵母」という微生物です。しかし、酵母は糖分がないと活動できません。さらに、麹が作り出すビタミンやアミノ酸などの栄養素は、酵母が元気に働くための「大好物のエサ」になります。 麹室で最高の麹が造れなければ、いくら優秀な酵母を投入しても、途中でバテてしまい良い発酵ができません。

理由3:お酒の「香り」のベースになるから

近年人気のフルーティーで華やかな日本酒(吟醸酒など)の香りは、酵母が発酵する際に生み出されます。しかし、その香りをきれいに引き出すためには、麹が「強すぎず弱すぎず、絶妙なバランスで糖分を供給し続けること」が絶対条件となります。

このように、後続のすべての工程は、麹室で造られた麹の品質に100%依存しています。「麹室での失敗は、その後のどんな技術でもカバーできない」と言われるほど、麹室は日本酒の味、香り、そして品質のすべてを左右する運命の場所なのです。

麹室の中はまるでサウナ!?驚きの温度と湿度の世界

酒造りといえば、雪深い冬の寒さの中で、白い息を吐きながら冷たい水に手を浸して作業する姿を想像される方が多いかもしれません。しかし、一歩「麹室」の扉を開けると、そこには全く別世界の「常夏の空間」が広がっています。

1. 酒蔵の中の「熱帯地域」

麹室の中は、常に室温30℃〜35℃、湿度60%以上という、極めて蒸し暑い環境に保たれています。 外気温が氷点下になるような厳冬期でも、麹室の中だけは、まるでじわじわと汗がにじむ「低温サウナ」のような状態。蔵人たちは、厚手の防寒着を脱ぎ捨て、Tシャツや薄手の作業着一枚でこの部屋に入り、真剣勝負の作業に挑みます。

2. なぜ「数値」がこれほど高いのか?

この過酷なほどの温度と湿度は、麹菌が最も元気に、かつ効率よく繁殖するために計算され尽くした数値です。

  • 温度(30℃〜35℃): 麹菌が「お米を食べよう!」と活発に動き出すスイッチが入る温度です。
  • 湿度(60%以上): お米の表面が乾燥して硬くなるのを防ぎ、麹菌の根(破精)がお米の芯に向かって深く潜り込めるようにサポートします。

3. 温度計とのにらめっこ

麹室の壁には、精密な温度計や湿度計が並んでいます。蔵人たちは、麹菌が発する「呼吸熱」によるわずか0.5℃の変化も見逃しません。

もし温度が上がりすぎれば、お米を広げて熱を逃がし、下がりすぎれば布を被せて保温する。この数値の維持は、機械任せではなく、最終的には人間の肌感覚と経験によって支えられています。

4. 蔵人たちの体調管理も一苦労

冬の外気温(5℃以下)と、麹室の室温(30℃以上)の差は、じつに30℃近くに達することもあります。この激しい温度差のなかを何度も往復しながら作業を続ける蔵人たちの仕事は、まさに体力と精神力を削る肉体労働。

一杯の日本酒の裏側には、こうした過酷な「熱帯環境」で、一粒ひとつぶのお米に命を吹き込む職人たちの汗が隠されているのです。

職人たちの戦場!麹室で行われる「48時間のドラマ」

麹室に蒸し上がったお米が運び込まれてから、サラサラとした見事な米麹として完成するまでには、約48時間(およそ2日間)の時間がかかります。

この48時間、麹菌という生き物を相手にする蔵人たちに「休戦」の二文字はありません。昼夜を問わず、寝る間を惜しんでお米を見守り続ける、熱いドラマのタイムラインをダイジェストでご紹介します。

【麹造りのタイムライン(約48時間)】
[0時間] 引き込み ──> [2時間] 種付け ──> [20時間] 盛り ──> [30時間] 仲仕事 ──> [36時間] 仕舞仕事 ──> [48時間] 出麹

【1日目・午前】引き込み(ひきこみ)~すべてはここから始まる~

ホカホカに蒸し上がったお米を適温まで冷まし、一気に麹室の中へと運び込む作業です。 サウナのような室内へ、大量の重い蒸し米を担いで運び入れる作業は、開始早々にして体力を激しく消耗する重労働。運び込まれたお米は、室の中央にある大きな作業台(床:とこ)に広げられ、温度を均一にするために手際よく揉みほぐされます。

【1日目・昼】種付け(たねつけ)~神聖なる緑のシャワー~

お米の温度が最適になった瞬間、もっとも神聖な儀式が始まります。 蔵人が「種麹(たねこうじ)」と呼ばれる緑色の細かい粉(麹菌の胞子)を、専用のふるいを使ってパウダーマシンのように美しく、均一にお米の上へと振りかけます。人気漫画『もやしもん』でもおなじみの、麹菌たちが「かもすぞー!」と一斉にお米に舞い降りる、息をのむほど美しい瞬間です。

【2日目・朝】盛り(もり)~個室への引っ越し~

種付けから一晩、お米を布で包んで保温し、麹菌が芽を出すのを待ちます。翌朝、麹菌が活動を始めてお米が熱を持ち始めたら、大きな作業台から「麹箱(こうじばこ)」と呼ばれる小さな木製の箱などへ、お米を小分けにしていきます。ここからは、お米を一粒ずつ丁寧にケアするための「個室管理」へと移行します。

【2日目・昼~夜】仲仕事(なかしごと)&仕舞仕事(しまいしごと)~職人の不眠不休の戦い~

ここからが「48時間のドラマ」のクライマックスです。 麹菌の繁殖がピークを迎えると、お米は自らの発熱でグングン温度が上がっていきます。

  • 仲仕事(午後): 上がりすぎる温度を抑えるため、箱の中のお米を広げて空気を通し、温度を一度下げてあげます。
  • 仕舞仕事(深夜): さらに数時間後、再び急上昇する熱を逃がすため、今度はお米の表面に溝を掘るようにして表面積を広げ、最終的な水分を飛ばす調整を行います。

この時期、温度のチェックは深夜も2~3時間おきに行われます。杜氏(とうじ)や麹担当の蔵人は、麹室のすぐ隣にある仮眠室に泊まり込み、アラームの音とともに真夜中の麹室へと向かいます。お米のわずかな「熱気の変化」を肌で感じ取り、我が子を育てるようにして朝まで付き添うのです。

【3日目・朝】出麹(でこうじ)~感動のフィナーレ~

丸2日間の過酷な管理を経て、ついに最高の状態に仕上がった米麹を麹室から外へと運び出します。これを「出麹」と呼びます。 完成した麹は、表面が栗のような甘く香ばしい香りに包まれ、お米の表面には白い破精(はぜ:麹菌の菌糸)が美しく輝いています。

職人たちが寝る間を惜しみ、汗を流し、五感を研ぎ澄まして駆け抜けた48時間。こうして命を吹き込まれた米麹が、最高の日本酒を生み出すための原動力となっていくのです。

麹室の管理で日本酒の「味わい」はどう変わる?

「甘口でフルーティーなお酒」「キリッと辛口で力強いお酒」など、日本酒にはさまざまな味わいのキャラクターがあります。実は、こうしたお酒の個性の大部分は、麹室の中での温度や湿度のコントロールによってあらかじめ決定づけられています。

蔵人たちが麹室の中で目指すのは、お米の表面にどれくらい麹菌の菌糸を繁殖させるかという「破精(はぜ)」のコントロールです。これには大きく分けて2つのスタイルがあり、どちらを目指すかで最終的な日本酒の味わいがガラリと変わります。


スタイル1:総破精(そうはぜ)

  • 特徴: お米の表面全体をパウダー雪のように白い麹菌がびっしりと覆い、芯に向かってもしっかりと菌糸が食い込んでいる状態です。
  • 味わいへの影響: 酵素の力が非常に強くなるため、お米のデンプンやタンパク質を余すことなくしっかりと溶かします。結果として、お米の旨味が凝縮された、コクのある力強い味わいのお酒(主に純米酒や生酛系など)になりやすいのが特徴です。

スタイル2:突き破精(つきはぜ)

  • 特徴: お米の表面にはポツポツと斑点状にしか麹菌が見えないものの、菌糸はお米の芯に向かってピンポイントで深く突き刺さるように伸びている状態です。
  • 味わいへの影響: 酵素の力が強すぎず弱すぎず、絶妙にコントロールされます。お米が溶けすぎるのを防ぐため、雑味がまったく出ません。結果として、きれいで上品、かつ華やかでフルーティーな味わいのお酒(主に吟醸酒や大吟醸酒など)を造るのに最高の麹となります。

麹室は、日本酒の「設計図」を具現化する場所

このように、蔵人が麹室の中で「今回は総破精にしよう」「今回はもっときれいな突き破精を狙おう」と温度や湿度をミリ単位で調整することで、目指す日本酒のキャラクターが形作られていきます。

★お酒がもっと楽しくなるポイント すっきりした大吟醸を飲んだときは「あのサウナのような麹室で、菌糸が広がりすぎないようにハラハラしながら温度を下げたんだな」、濃厚な純米酒を飲んだときは「お米全体にしっかりと菌が回るように、じっくり温めて育てたんだな」と想像してみてください。

目の前の一杯が、麹室という名のステージで職人が描き出した「狙い通りのアート」であることが分かり、日本酒選びが何倍も面白くなりますよ。

一般人は立ち入り禁止!麹室が「聖域」と呼ばれる理由と厳しいルール

酒蔵見学に足を運んだことがある方でも、「麹室の中だけはガラス越しにしか見られなかった」という経験はありませんか?

それもそのはず、麹室は蔵人であっても限られた人しか入ることが許されない、文字通りの「聖域」。一般の人が中に立ち入ることは、100%不可能です。これほどまでに厳重に隔離されているのは、ひとえに徹底された衛生管理と、目に見えない「菌の戦争」があるからです。

1. 最大の天敵は「納豆菌」!

日本酒造りにおいて、もっとも恐れられている雑菌が「納豆菌」です。 実は、納豆菌は麹菌よりもはるかに繁殖力が強く、熱にも乾燥にも異常なほど強いという性質を持っています。もし、納豆菌が麹室の中に一粒でも入り込んでしまったら、その強力な繁殖力であっという間に部屋中を支配してしまいます。

納豆菌に汚染されたお米はベタベタと糸を引いてしまい、日本酒用の麹としては全く使えなくなってしまいます。そのため、酒造りに携わる蔵人たちは、「酒造りの期間中は絶対に納豆を食べない」という厳しいルールを自らに課しているのです。

2. 麹室に入るための「厳格な儀式」

納豆菌だけでなく、私たちの衣服や髪の毛に付着している野生のカビやチリも、デリケートな麹室にとっては大きな脅威です。そのため、蔵人が麹室に入る際には、まるで病院の手術室に入るかのような厳格なルールが存在します。

  • 専用の衣服・靴に着替える: 外部の汚れを持ち込まないよう、麹室専用の清潔な作業着や帽子、靴に履き替えます。
  • 徹底的な殺菌: 手指のアルコール消毒はもちろん、室内に持ち込む道具もすべて事前に熱湯や日光で限界まで殺菌されます。
  • 体調不良時は立ち入り禁止: 万が一、蔵人が風邪などをひいている場合は、体内の雑菌を室内に持ち込まないよう、作業から外れることもあります。

3. 神聖な空間が守る、一杯の透明感

ここまで徹底して周囲の雑菌をシャットアウトするからこそ、麹室の中は「麹菌だけがのびのびと育つピュアな空間」を維持できます。

次にあなたが日本酒を口にしたとき、その雑味のないクリアな味わいや、心が洗われるような澄んだ香りに注目してみてください。それは、蔵人たちが「聖域」のルールを頑なに守り抜き、他の菌の侵入を完璧に防ぎきったという、何よりの証拠なのです。

伝統の木造 vs 最新のクリーンルーム!進化する現代の麹室

日本酒造りの世界にも、時代の変化とともに新しいテクノロジーの波が押し寄せています。その象徴とも言えるのが、麹室の「進化」です。

現在、日本酒業界には昔ながらの「伝統的な木造の麹室」と、最先端技術を導入した「現代的なステンレス製の麹室」の2つのスタイルが存在します。それぞれのメリットや特徴を分かりやすく比較してみましょう。


「木造」と「ステンレス製」の比較

タイプメリット特徴
伝統的
(木造・杉)
木が呼吸し、自然な調湿ができる。
職人の経験と勘が最大限に生かされる。
温かみがあり、酒造りの歴史やロマンを肌で感じられる。
現代的
(ステンレス・空調制御)
1度単位、1%単位での精密な管理が可能。
データに基づいた高い再現性がある。
外部の気候に左右されず、常に安定した高品質なお酒を造れる。

どちらの麹室にも宿る「美味い酒への情熱」

伝統的な木造の麹室は、杉の木が持つ天然の調湿力と、杜氏たちの五感によってお米が劇的に変化していくエッセンスが詰まっています。職人の技がダイレクトに反映されるため、仕上がったときの一体感やロマンは格別です。

一方で、現代的なクリーンルーム型の麹室は、「職人の勘」という不確定な要素を徹底的に数値化し、極限まで衛生的に、かつ狙い通りの味わいを再現するために作られました。これは決して「手抜き」ではなく、現代の科学技術をもって最高の一滴を追求した結果の姿です。

アプローチは180度異なりますが、どちらの麹室にも「飲む人を唸らせる、最高に美味い酒を造りたい」という蔵人たちの熱い情熱が共通して息づいています。酒蔵ごとの「麹室の選択」に注目してみるのも、大人の日本酒の楽しみ方と言えるでしょう。

麹室のこだわりを知ると、日本酒選びがもっと楽しくなる!

ここまで記事を読んでくださったあなたは、もう立派な「麹室マニア」の一歩を踏み出しています。次に日本酒を選ぶとき、そして飲むとき、この知識があるだけで日本酒の世界は驚くほどドラマチックに広がります。

実際に、これからの日本酒ライフがもっと楽しくなるアクションをご紹介します。

1. 酒蔵のホームページやSNSを「裏読み」してみる

最近では、多くの酒蔵がホームページやInstagram、YouTubeなどで自社の酒造りの様子を発信しています。そのなかで「今年は麹室の床(とこ)を新調しました!」「当蔵の麹室はステンレス製で……」といったマニアックな情報を見つけたら、それがまさに狙い目です。

「この蔵は伝統的な杉の部屋で、職人技を詰め込んでいるんだな」「ここは最新鋭のクリーンルームで、徹底的にクリアな味を追求しているんだな」と、飲む前から味わいのヒントを掴むことができます。

2. 「ラベルの向こう側」を想像しながら味わう

お気に入りの一本を見つけたら、ぜひグラスに注いで、じっくりとその香りと味に向き合ってみてください。

  • フルーティーな大吟醸を飲むときは…… 「この雑味のないきれいな甘みは、あのサウナのような麹室のなかで、蔵人たちが深夜もお米の温度を0.5℃単位でコントロールしながら守り抜いた『突き破精(つきはぜ)』の成果なんだな……」
  • ふくよかな純米酒を飲むときは…… 「このお米の力強い旨味は、杉の木の香りが漂う部屋で、お米全体にびっしりと麹菌を回した『総破精(そうはぜ)』のパワーが生きているんだな……」

ただ「美味しい」と飲むだけでなく、その液体が生まれる背景にある「麹室での48時間のドラマ」に想いを馳せる。それだけで、目の前の一杯が何倍も愛おしく、そして深く感じられるはずです。

酒蔵の数だけ、そしてお酒の数だけ、独自の「麹室の物語」があります。ぜひあなたも、そんな職人たちの情熱を五感で受け止めながら、お気に入りの一杯を探してみてくださいね。

まとめ

日本酒造りの心臓部であり、蔵人たちが命を懸けてお米と向き合う聖域「麹室(こうじむろ)」。

普段は決して目にすることのできない扉の向こう側には、以下のようなたくさんのこだわりとドラマが詰まっていました。

  • 味わいの設計図: 「一麹、二酛、三造り」の言葉通り、お酒の骨格や香りのベースはすべて麹室の中で決まる。
  • 過酷なサウナ環境: 冬の寒さの中で、室温30℃〜35℃、湿度60%以上という真夏の環境を24時間体制でキープしている。
  • 48時間の不眠不休のドラマ: 職人たちが深夜も数時間おきに温度をチェックし、我が子のように麹菌を育てる。
  • 徹底された聖域のルール: 納豆菌などの雑菌を完全にシャットアウトするため、厳格な衛生管理が守られている。

次にあなたが日本酒を飲むときは、ぜひそのボトルの向こう側にある「麹室の熱気」や、蔵人たちが駆け抜けた「48時間のドラマ」に想いを馳せてみてください。

「このフルーティーさは、あの部屋で一晩中お米を見守った成果なんだな……」 そう想像しながら口に含む一杯は、きっとこれまで以上に深く、体に染み渡るような愛おしい味わいに感じられるはずです。

背景にあるストーリーを知ることで、日本酒はもっと美味しく、もっと楽しくなります。ぜひ、あなただけの特別な一杯を、麹室の物語とともに見つけてみてくださいね!

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Posted by 新潟の地酒