日本酒 協会 酵母 一覧|主要酵母の特徴と選び方ガイド

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日本酒の香りや味わいは「酵母」によって大きく左右されます。なかでも「協会酵母」は、日本醸造協会が全国の蔵元へ頒布している公的な酵母で、多くの日本酒造りに使われています。この記事では、協会酵母の基本知識から代表的な酵母の一覧と特徴、選び方のポイントまで、初心者にもわかりやすく解説します。酵母を知ることで、日本酒の世界がもっと楽しく、奥深く感じられるはずです。

1. 協会酵母とは?その役割と歴史

協会酵母とは、日本醸造協会が全国の酒蔵へ頒布している、清酒造り専用の純粋培養酵母のことです。その始まりは明治時代、国立醸造試験所の設立(1901年)とともに、優良な蔵付き酵母を全国に広めるための取り組みが始まったことにあります。当時は各蔵が独自に酵母を使っていたため、品質や安定性にばらつきがありました。そこで、日本醸造協会が設立され、各地の優れた酵母を純粋培養し、全国の蔵元に均等に供給することで、酒質の向上と安定化を図るようになりました。

協会酵母は、番号ごとに特徴があり、1号から始まり、現在では6号・7号・9号などが広く使われています。これらは、もともと各地の有名蔵元で使われていた蔵付き酵母をルーツに持ち、それぞれ発酵力や香り、味わいに個性があります。また、泡あり酵母から泡なし酵母への進化もあり、現代の酒造りでは泡なし酵母が主流となっています。

協会酵母の普及によって、日本酒の品質は飛躍的に向上し、全国どこでも安定した美味しい日本酒が造られるようになりました。酵母の選択は酒蔵の個性を表現する大切な要素であり、協会酵母の歴史は日本酒の発展そのものといえるでしょう。

2. 協会酵母の種類と番号の意味

協会酵母は、日本醸造協会が全国の蔵元に頒布している純粋培養酵母で、「6号」「7号」「9号」など、発見された順に番号が付けられています。基本的にはこの番号が酵母の発見順を示していますが、例外もあります。たとえば、9号は6号や7号よりも後に発見されていますが、特に吟醸酒造りで広く使われるなど、それぞれの酵母に個性があります。

また、協会酵母には「泡あり酵母」と「泡なし酵母」の2種類があります。泡あり酵母は、発酵中にもろみの表面に高い泡を形成し、泡の状態を見ることで発酵の進み具合を判断できる伝統的なタイプです。しかし、泡が高くなるとタンクからあふれるリスクがあり、蔵人が夜通し管理する必要がありました。

そこで登場したのが「泡なし酵母」です。泡なし酵母は、泡あり酵母の突然変異株から生まれ、炭酸ガスの泡に酵母が付着しないため高泡ができにくく、発酵タンクの容量を有効に使えるなど管理がしやすいというメリットがあります。泡なし酵母は、元の酵母番号の後ろに「01」をつけて表記されるのが一般的で、たとえば7号酵母の泡なし版は「701号」、9号の泡なし版は「901号」となります。

泡なし酵母は、泡あり酵母とほぼ同じ酒質を生み出しながらも発酵管理がしやすいため、現代の酒造りでは主流となっています。とはいえ、泡の状態をもろみ管理の指標としたい蔵や、伝統的な酒造りにこだわる蔵では、あえて泡あり酵母を使い続けている場合もあります。

このように、協会酵母の番号や泡の有無は、酒造りの現場での使い勝手や、できあがる日本酒の個性に大きく関わっています。ラベルや蔵元の説明で酵母の種類に注目してみると、日本酒選びがさらに楽しくなります。

3. 協会1号~5号の特徴と現状

協会1号から5号までの酵母は、日本酒造りの近代化が進んだ明治末期から大正時代にかけて分離・選抜され、日本醸造協会によって全国の蔵元に頒布されていました。これらの酵母は、当時の「近代的」な設備を持つ酒蔵で主流となり、日本酒の品質向上と安定化に大きく貢献しました。

協会1号酵母は1906年、兵庫県灘の「櫻正宗」から分離され、発酵力が強く、20℃前後という当時としては低温でしっかり発酵する点が特徴でした。濃醇な酒質で、扱いやすいことから広く使われていましたが、香りは控えめで、やや無骨な味わいが特徴とされています。

協会4号酵母は1924年に広島県の酒蔵で分離され、香りの良さや発酵経過の安定性が評価されましたが、保存中の変性により1931年頃には使用中止となりました。

協会5号酵母は1923年ごろ、広島県西条の「賀茂鶴」から分離され、果実のような芳香(後の吟醸香)で高く評価されました。発酵力はやや弱いものの、優良酒に向く酵母として知られていました。

これら1~5号の酵母は、現在では日本醸造協会からの頒布は行われておらず、一般的な酒造りで使われることはほとんどありません。その理由は、より香り高く、発酵力や管理性に優れた後発の酵母(6号以降)が登場し、主流となったためです。ただし、伝統や個性を重視する一部の蔵元では、復刻や限定酒として使われることもあります。

このように、協会1号~5号酵母は日本酒の歴史を語るうえで欠かせない存在ですが、現代では主に資料的・限定的な役割となっています。

4. 協会6号酵母(新政酵母)の特徴

協会6号酵母は、昭和5年(1930年)に秋田県の新政酒造で発見された酵母で、「新政酵母」とも呼ばれています。現在も日本醸造協会から頒布されている協会酵母の中では最も歴史が古く、現代日本酒の礎を築いた存在として知られています。

この6号酵母の最大の特徴は、発酵力が非常に強く、低温環境でも活性が高い点です。そのため、淡麗でクリアな酒質を生み出しやすく、安定した酒造りが可能となります。また、香りや味わいは比較的穏やかで、派手な吟醸香よりも、上品で澄んだ果実様の芳香がほんのりと感じられるのが特徴です。この穏やかな香りと柔らかな甘み、そして生酛造り特有の酸味が合わさることで、バランスの良い味わいが楽しめます。

新政酒造では、地元秋田県産の酒米と協会6号酵母にこだわり、伝統的な生酛造りを守りながらも、現代的な洗練された日本酒を生み出しています。代表的な銘柄「No.6」シリーズや「Colors」シリーズは、6号酵母の個性をダイレクトに感じられる逸品として人気です。

協会6号酵母は、個性が強すぎない分、酒蔵ごとの米や水、造り手の技術がダイレクトに表現されやすく、蔵元の個性が際立つ日本酒造りに適しています。伝統と革新が融合した、味わい深い日本酒を楽しみたい方におすすめの酵母です。

5. 協会7号酵母(真澄酵母)の特徴

協会7号酵母は、長野県諏訪市の老舗蔵「真澄(宮坂醸造)」で1946年に発見された酵母で、「真澄酵母」とも呼ばれています。この酵母は、発見当初から優れた発酵力と芳醇な香りが評価され、全国の蔵元に急速に広まりました。現在では「きょうかい酵母の横綱」とも言われるほど多くの酒蔵で使われており、現代日本酒の礎を築いた存在です。

協会7号酵母の最大の特徴は、発酵力が強く、華やかでフルーティーな香りをもたらすことです。特に吟醸酒や純米吟醸酒など、香りを重視した日本酒造りに最適とされます。一方で、クセが少なくバランスの良い味わいを生み出すため、普通酒から特定名称酒まで幅広い用途に使われています。この酵母で造られた日本酒は、落ち着いた香りと安定した味わいが特徴で、飲み飽きしにくく、初心者から日本酒ファンまで幅広く支持されています。

また、協会7号酵母は扱いやすく、安定した発酵を実現できる点も多くの蔵元に選ばれる理由のひとつです。信州諏訪の豊かな自然と、蔵人たちの丁寧な酒造りの姿勢が生んだこの酵母は、今も日本酒文化の発展に大きく貢献し続けています。

「真澄」をはじめとする7号酵母を使った日本酒は、日常の食卓から特別な日まで、さまざまなシーンで楽しめる親しみやすさが魅力です。酵母に注目して日本酒を選ぶことで、より深い味わいの世界に出会えるでしょう。

6. 協会9号酵母(熊本酵母)の特徴

協会9号酵母(通称「熊本酵母」)は、熊本県酒造研究所で野白金一氏によって分離・培養された酵母で、1968年から日本醸造協会より全国の酒蔵に頒布が始まりました。この酵母の登場は、日本酒の世界に大きな変革をもたらしました。

最大の特徴は、酸が穏やかで華やかな香りを生み出すことです。従来の酵母が安定した酒造りを重視していたのに対し、協会9号酵母は吟醸酒に欠かせないフルーティーで芳醇な香りを実現し、しかも発酵力が非常に強いという優れた性質を持っています。そのため、同じ原料を使っても、キレのある辛口から甘みと香りが際立つタイプまで、杜氏のイメージ通りに多彩な日本酒を造ることができるのです。

また、低温でもよく発酵し、泡が軽くて低く、発酵管理がしやすい点も酒蔵にとって大きな魅力です。吟醸酒人気の火付け役ともなったこの酵母は、今なお全国の多くの蔵元で使われており、日本酒における「香り」の価値を高めた立役者といえるでしょう。

協会9号酵母が使われているかどうかはラベルで分かりにくいこともありますが、吟醸酒や香り高い日本酒を選ぶ際には、ぜひ蔵元や酒屋さんに「酵母は何を使っていますか?」と尋ねてみてください。熊本発祥のこの酵母が、今も日本酒文化を支え続けていることにきっと驚かれるはずです。

7. 協会10号・14号・15号など新世代酵母の特徴

協会10号・14号・15号などの新世代酵母は、従来の協会酵母とは異なる個性や特徴を持ち、現代の日本酒造りに新たな魅力をもたらしています。

まず「協会10号酵母」は、茨城県の明利酒類が開発した「小川酵母」としても知られています。小川酵母は、酸が少なく、低温での発酵にも強いのが特徴です。香りは上品で控えめ、淡麗で芳香のある吟醸酒や純米酒に向いています。また、アルコール添加後も死滅しにくいという性質があり、安定した酒質を実現できます。ただし、アルコール耐性がやや弱く、扱いが難しい面もあります。

「協会14号酵母」は、石川県の金沢国税局で分離されたことから「金沢酵母」とも呼ばれています。吟醸酒に適した酵母で、穏やかで上品な香りと、なめらかな口当たりを生み出します。北陸地方を中心に多くの蔵元で使われており、地元の水や米との相性も良いとされています。

「協会15号酵母」は、秋田県で開発された酵母で、「秋田酵母」や「AKITA雪国酵母」としても知られています。カプロン酸エチル(リンゴやメロンのような吟醸香)や酢酸イソアミル(バナナのような香り)を多く生成し、フルーティで華やかな香りが特徴です。さらに、アルコール耐性が高く、香りの変化が少ないため、フレッシュな風味を長く保つことができます。

これら新世代酵母は、蔵元の個性や地域性をより際立たせるために活用されており、日本酒の多様化や新しい味わいの開発に大きく貢献しています。香りや味わいの違いに注目しながら、ぜひさまざまな酵母を使った日本酒を楽しんでみてください。

8. 泡なし酵母(601号・701号・901号など)のメリット

泡なし酵母は、発酵中にもろみに高泡を形成しない性質を持つ酵母で、きょうかい酵母の場合は6号・7号・9号などの親株から分離された変異株が「601号」「701号」「901号」などの番号で頒布されています。泡なし酵母の最大のメリットは、発酵中に泡が高く立たないため、泡消し器の設置や泡の管理が不要になり、仕込みタンクの容量を効率よく使えることです。これにより、同じタンクでも仕込み量を増やすことができ、作業の省力化や生産性の向上につながります。

また、泡あり酵母と比べても、発酵力や酒質への影響はほとんど変わらず、親株の特徴をそのまま受け継いでいるため、安心して使える点も大きな魅力です。泡が立たないことで、もろみ内の酵母密度を高く保つことができ、発酵速度がやや速くなる傾向もあります。

現代の酒造りでは、泡なし酵母が主流となっており、きょうかい酵母の頒布量の約7割を占めるまでになっています。一方で、泡の状態を見て発酵の進行を判断したい蔵や、伝統的な酒造りにこだわる蔵では、あえて泡あり酵母を使い続けている場合もあります。

このように、泡なし酵母は酒造りの現場で多くのメリットをもたらし、現代の清酒造りに欠かせない存在となっています。

9. 香り・味わい別に見る酵母の選び方

日本酒の香りや味わいは、酵母の種類によって大きく左右されます。特に吟醸酒やフルーティーな日本酒を選びたい方は、酵母が生み出す香り成分に注目するとよいでしょう。日本酒の香りの主役は「酢酸イソアミル」と「カプロン酸エチル」という2つの成分で、酵母ごとにどちらを多く生成するかで酒の個性が変わります。

「酢酸イソアミル」はバナナや洋梨のような爽やかで青みを帯びた香りを生み出し、「カプロン酸エチル」はリンゴやメロンのような甘く華やかな香りが特徴です。例えば、協会9号酵母や1801酵母はカプロン酸エチルの生成量が多く、華やかな吟醸香を持つ大吟醸酒やフルーティーな日本酒に向いています。一方、協会7号酵母は香りが穏やかでバランスが良く、幅広いタイプの日本酒に使われています。

また、淡麗でクリアな味わいを求めるなら、協会6号酵母のような発酵力が強く、香りが控えめな酵母がおすすめです。逆に、濃醇なコクや旨味を楽しみたい場合は、酸やアミノ酸の生成が多い酵母や、伝統的な製法を活かした酵母を選ぶと良いでしょう。

酵母の違いは日本酒のラベルや蔵元の説明で確認できることも多いので、香りや味わいの好みに合わせて酵母を選んでみてください。酵母に注目することで、日本酒選びがより楽しく、奥深いものになります。

10. 協会酵母の最新動向と今後の展望

近年の日本酒業界では、従来の協会酵母に加えて、より個性的で香り高い新しい酵母の開発や活用が進んでいます。その代表格が「協会1801号酵母」です。1801号は、現在使われている協会酵母の中で最も高い芳香性を持ち、特に大吟醸酒に適しています。バナナのような酢酸イソアミルと、リンゴのようなカプロン酸エチルという2つの吟醸香成分を多く生み出し、華やかで透明感のある味わいが特徴です。酸度が低く、発酵力も高いので、まろやかで飲みやすい大吟醸酒を造りたい蔵元に人気があります。

さらに、酵母の多様性を追求する動きとして「花酵母」などの新しい取り組みも注目されています。花酵母は、桜やバラ、朝顔などの花から分離された天然酵母で、独特の香りや味わいを持つ日本酒を生み出します。こうした酵母は、地域性や蔵元の個性を表現する手段としても活用され、消費者に新しい日本酒の楽しみ方を提案しています。

また、健康志向や機能性を重視した酵母の開発も進んでおり、GABAなどの成分を多く含む新しいクラフトビールや清酒も登場しています。酵母市場全体も拡大傾向にあり、2025年には世界市場規模が61億ドルに達するという予測もあります。

今後も、協会酵母をはじめとした新しい酵母の開発や多様な活用が、日本酒の香りや味わいの幅をさらに広げていくでしょう。酵母に注目して日本酒を選ぶことで、より自分好みの一杯と出会える楽しさが増していきます。

11. よくある質問Q&A

Q1. 協会酵母はどうやって選べばいいの?
協会酵母はそれぞれ香りや味わいに特徴があります。たとえば、華やかな吟醸香やフルーティーな日本酒を楽しみたい方には「協会9号」や「1801号」などが人気です。一方で、バランスの良い味わいや穏やかな香りを求めるなら「協会6号」や「7号」もおすすめです。お酒のラベルや蔵元の説明に酵母名が記載されていることも多いので、好みやシーンに合わせて選んでみてください。

Q2. 家庭用の酵母はある?自宅で日本酒は造れる?
日本醸造協会では、清酒用の乾燥酵母も頒布しています。乾燥酵母は扱いやすく、温度管理も比較的簡単なので、家庭での小規模な酒造りや研究用にも利用されています。ただし、日本国内では酒税法により自宅でアルコール度数1%以上のお酒を造ることは禁止されています。趣味や学習目的であっても、法律を守って楽しみましょう7

Q3. 酵母によって日本酒の味はどう変わるの?
酵母は日本酒の香りや味わいに大きな影響を与えます。たとえば、協会9号や1801号はリンゴやバナナのような華やかな吟醸香を生み出し、7号はバランスの良い香りと味わい、6号は穏やかでクリアな味わいが特徴です。また、14号や15号などは地域ごとの個性を活かした味わいを持っています。酵母ごとの違いを知ることで、より自分好みの日本酒に出会いやすくなります。

Q4. 野生酵母や花酵母とは何が違うの?
協会酵母は日本醸造協会が選抜・培養した安定性の高い酵母ですが、野生酵母や花酵母は自然界や花から分離した酵母です。野生酵母は個性的な香りや味を生み出す反面、発酵の安定性や酒質の再現性に課題があります。最近では、蔵元独自の個性を表現するために、あえて野生酵母や花酵母を使う酒蔵も増えています。

Q5. 協会酵母の保存や管理はどうするの?
協会酵母はアンプルや乾燥酵母の形で頒布されます。乾燥酵母の場合は、適切な温度で保存し、使用時は指定された温度で復水することで高い発酵力を保つことができます。

このように、協会酵母は日本酒の味や香りを大きく左右する重要な存在です。酵母の種類や特徴を知ることで、日本酒選びや飲み比べがより楽しくなります。

まとめ:協会酵母を知ることで広がる日本酒の楽しみ

協会酵母は、日本酒の個性や味わいを大きく左右する大切な存在です。6号や7号、9号など、酵母ごとに香りや味、発酵力に違いがあり、蔵元がどの酵母を選ぶかによって、その日本酒の特徴が決まります。たとえば、華やかな吟醸香を楽しみたいなら9号や1801号、バランスの良い味わいなら7号、すっきりとした酒質なら6号といったように、酵母を知ることでラベル選びや飲み比べがより楽しくなります。

最近では、1801号や花酵母など新しい酵母も登場し、日本酒の世界はますます多様化しています。香りや味の好みに合わせて酵母を選ぶことで、自分だけのお気に入りの一杯に出会えるはずです。ぜひ、さまざまな酵母の日本酒を試して、奥深い日本酒の世界をもっと身近に感じてみてください。