日本酒中取りとは?その魅力から選び方・飲み方まで徹底解説

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日本酒のラベルで見かける「中取り」という表示。これは日本酒造りの工程で生まれる特別な酒質を表しています。中取りは日本酒の中でも特にバランスが取れた上質な部分と言われ、近年注目を集めています。本記事では中取りの定義からその魅力、他の搾り方との違い、おすすめの楽しみ方まで、日本酒初心者にもわかりやすく解説します。

日本酒中取りとは?基本的な定義と特徴

日本酒の「中取り(なかどり)」は、醪(もろみ)を搾る工程で得られる中間部分の酒を指します。伝統的な槽搾りでは、圧力をかける前に自然に出てくる「あらばしり」と、強い圧力をかけて最後に搾る「責め」の中間に位置する部分です137

主な特徴

  • 透明感のある澄んだ酒質で、雑味が少ない
  • 香りと味のバランスが非常に優れている
  • 蔵元によっては「中垂れ」「中汲み」とも呼ばれる

中取りは日本酒の中でも特に品質が高い部分とされ、品評会の出品酒として選ばれることも多いです。その味わいは落ち着いたまろやかさが特徴で、初心者にも飲みやすいとされています。

中取りが生まれる「搾り」の工程解説

日本酒の「中取り」は、醪(もろみ)を搾る工程の中間段階で得られる特別な部分です。この工程には伝統的な「槽搾り」と現代的な「ヤブタ式」の2つの主な方法があります。

伝統的な槽搾りの特徴

  • 醪を入れた酒袋を木製の槽(ふね)に積み重ね
  • 自然の重みでゆっくりと圧力をかけ
  • 最後に機械で軽く圧力を加える

現代的なヤブタ式の特徴

  • 自動圧搾機で連続的に搾る
  • 圧力調整が細かく可能
  • 効率的な大量生産に向く

工程の流れは「あらばしり→中取り→責め」の順で進行します:

  1. あらばしり:圧力をかける前に自然に流れ出す部分
  2. 中取り:適度な圧力をかけて搾る中間部分
  3. 責め:強い圧力をかけて最後に搾る部分

圧力をかけるタイミングが特に重要で、中取りを得る際には:

  • 急激な圧力上昇を避ける
  • 0.5-1kg/cm²程度の適度な圧力
  • 時間をかけてゆっくり搾る

この工程管理によって、雑味が少なく香味のバランスが取れた中取りの良質な酒質が生まれます。特に吟醸酒など高級酒では、この搾り方の繊細な調整が重要視されています。

中取りとあらばしりの違い【比較表】

日本酒の「中取り」と「あらばしり」は、搾るタイミングによって生まれるまったく異なる酒質です。それぞれの特徴を比較すると次のようになります。

特徴中取りあらばしり
透明度高い(澄んだ透明感)やや白濁(微細な澱を含む)
味わいまろやかでバランスが良いフレッシュでワイルド
香り落ち着いた芳香華やかで若々しい香り
アルコール度数標準(15~16度程度)やや低め(14度前後)
搾り方適度な圧力で搾る自然に流れ出る
雑味少ない微発泡感あり
主な用途鑑評会出品・贈答用季節限定・蔵元直売

中取りは「日本酒の最高品質部分」と呼ばれることが多く、透明感とバランスの取れた味わいが特徴です。一方、あらばしりは搾りたてのフレッシュさと微発泡感が魅力で、季節限定商品として人気を集めています。同じ醪から生まれるとは思えないほど個性が異なるため、飲み比べてみるのもおすすめです。

中取りと責めの違い【比較表】

日本酒の「中取り」と「責め」は、搾り工程の異なる段階で得られるまったく異なる酒質です。それぞれの特徴を体系的に比較すると次のようになります。

特徴中取り(中垂れ・中汲み)責め(押し切り)
搾り工程適度な圧力で自然に搾る中間部分最終的に強圧をかけて搾る部分
透明度澄んだ透明感やや濁りがある
雑味非常に少ない(高品質)多く含まれる
味わいバランスの取れたまろやかさ濃厚で力強い
香り繊細で上品な芳香強い個性のある香り
アルコール度数標準(15~16度程度)やや高め(16~17度程度)
用途贈答用・品評会出品ブレンド用・蔵元限定
価格帯高価格比較的廉価
熟成適性長期熟成向き早飲み向き

中取りは「日本酒の最高品質部分」とされ、透明感とバランスの取れた味わいが特徴で、大吟醸など高級酒の単独瓶詰めに使われることが多いです。一方、責めは濃厚な味わいがあり蔵元によっては「コク酒」として独自に瓶詰めされることもありますが、主にブレンド用として使われる傾向があります。

中取りの5つの魅力

日本酒の「中取り」は、搾りの工程で得られる最も上質な部分として知られています。その魅力は多岐にわたり、飲み手にとって特別な体験をもたらします。

  • 香味のバランスが絶妙
    中取りは「あらばしり」や「責め」と比べて、香りと味わいのバランスが非常に優れており、まろやかで落ち着いた味わいが楽しめます。
  • 雑味が少なくクセがない
    圧力をかけて搾る中間部分であるため、雑味が少なくクリアな味わい。クセがなく飲みやすいのが特徴です。
  • 透明感のある美しい酒質
    色合いは透き通っており、見た目にも美しいのが中取りの特徴。日本酒の中でも特に澄んだ酒質として評価されています。
  • 贈答用として最適
    品質の高さとバランスの良さから、贈答品としても喜ばれることが多いです。品評会に出品されることも多く、信頼の証とも言えます。
  • 初心者にも飲みやすい
    クセが少なく飲みやすいため、日本酒初心者にもおすすめ。初めての方でも楽しみやすい味わいです。

これらの魅力が詰まった中取りは、「もっとも良い部分だけを凝縮したお酒」として、多くの日本酒ファンに愛されています。ぜひ一度味わってみてください。

中取り酒のおすすめ選び方3つのポイント

日本酒の中でも特に品質が高く人気のある「中取り酒」を選ぶ際には、以下の3つのポイントを押さえると失敗が少なく、自分に合った一本を見つけやすくなります。

1. ラベルに「中取り」と明記された商品を選ぶ

中取りは搾りの工程で得られる特別な部分の酒を指します。ラベルに「中取り」や「中汲み」「中垂れ」と明記されている商品は、透明感があり香味のバランスが良いことが多いです。これらの表記があるかどうかをまず確認しましょう126

2. 純米大吟醸や大吟醸などの上級酒から試す

中取りは特に吟醸系の上級酒で採用されることが多く、純米大吟醸や大吟醸の中取り酒は香り高くまろやかな味わいが楽しめます。初心者の方は、まずこれらのグレードから試すのがおすすめです。

3. 蔵元直営店や専門店でアドバイスを受ける

日本酒は銘柄や製法によって味わいが大きく異なります。蔵元直営店や日本酒専門店では、スタッフが商品の特徴やおすすめの飲み方を丁寧に教えてくれます。品質管理もしっかりしているため、安心して購入できます。

これらのポイントを踏まえて選べば、中取り酒の魅力を存分に楽しめる一本に出会いやすくなります。特に「十四代」や「楽器正宗」などの銘柄は中取り酒としても評価が高く、初心者から上級者まで幅広く支持されています。ぜひ参考にしてみてください。

中取り日本酒のおすすめ銘柄5選

日本酒の「中取り」は、搾りの工程で得られる特に品質の高い部分です。ここでは、中取りの魅力を存分に味わえるおすすめ銘柄を5つ厳選しました。

  • 彗 ベネット 中取り純米大吟醸
    長野県の遠藤酒造場が醸す特別な一本。山田錦を50%まで磨き、中取りだけを厳選した芳醇な味わいが特徴で、フルーティーな香りとまろやかな口当たりが楽しめます。
  • 作 雅乃智 純米大吟醸 中取り
    香りと味わいのバランスが絶妙な逸品。中取りならではの透明感のある酒質で、贈答用としても喜ばれます。
  • 門外不出 純米大吟醸 中取り原酒
    蔵元限定で数量も少ない貴重な中取り酒。濃厚ながらもすっきりとした後味が特徴で、熱燗でも楽しめます。
  • 大吟醸【山猿】中取り出品酒
    品評会出品用に特別に醸された中取りの大吟醸。華やかな香りと繊細な味わいが特徴です。
  • 天明 中取り伍号 純米
    伝統的な槽搾りで丁寧に搾った中取り酒。クセが少なく飲みやすいため、初心者にもおすすめです。

これらの銘柄は、中取りならではの透明感とバランスの取れた味わいを存分に楽しめるものばかりです。特に「作 雅乃智」と「彗 ベネット」は国内外のコンクールで高い評価を受けており、中取り酒の魅力を知るのに最適な一本と言えます。

中取り酒を美味しく飲むための温度と器

中取りの日本酒は、その繊細な香りとまろやかな味わいを最大限に楽しむために、温度と酒器の選択が重要です。適切な組み合わせで、中取りならではの魅力を存分に堪能できます。

温度の選び方

  • 冷酒(10℃前後)
    中取りのフルーティーな香りを存分に楽しめる温度帯です。特に大吟醸系の中取り酒におすすめで、清涼感ある飲み口が特徴です。
  • ぬる燗(40℃前後)
    まろやかさが引き出され、米の旨みが際立ちます。純米酒系の中取りに最適で、体も温まるため寒い季節におすすめです。

おすすめの酒器

  • ワイングラス
    中取りの繊細な香りを存分に楽しめるため、特に大吟醸系の中取り酒に最適です。グラスの形状が香りを閉じ込め、より豊かな香りを堪能できます。
  • 陶器のお猪口
    伝統的な飲み方を楽しみたい方におすすめです。中取りのまろやかさをしっかりと感じられます。

温度と酒器を組み合わせることで、中取り酒の特徴をより鮮明に楽しめます。冷酒+ワイングラスで香りを、ぬる燗+お猪口でまろやかさを、といったように目的に合わせて選ぶと良いでしょう。

中取り酒に合うおつまみベスト3

日本酒の中取りは、繊細でバランスの良い味わいが特徴です。そのため、あっさりとした素材の味を活かしたおつまみがよく合います。特におすすめの3つをご紹介します。

  1. 刺身(特に白身魚)
    白身魚の刺身は淡白でクセが少なく、中取りのまろやかな味わいと相性抜群です。淡麗辛口の日本酒と合わせると、魚の旨味と酒の香りが引き立ちます。
  2. 湯豆腐
    あっさりとした湯豆腐は、純米酒や純米吟醸の中取り酒とよく合います。豆腐の優しい味わいが酒の旨味を引き立て、口の中をさっぱりとさせてくれます。
  3. 淡味のチーズ
    マイルドでクセの少ないチーズは、中取りの繊細な香りを邪魔せず、まろやかな味わいを楽しめます。燻製チーズなどもおすすめで、日本酒の旨味とチーズのコクが絶妙にマッチします。

これらのおつまみは、中取り酒の特徴を活かしつつ、食事の時間をより豊かにしてくれます。ぜひ試してみてください。

中取りQ&A【よくある疑問に回答】

日本酒の「中取り」について、特に多く寄せられる疑問をQ&A形式で解説します。中取りの特徴や価値についての理解が深まります。

Q: 中取りはなぜ高級なのか?

A: 以下の3つの理由から高級とされます:

  • 搾れる量が全体の50%程度と限られている
  • 雑味が少なく香りと味のバランスが最高品質
  • 品評会出品用として選ばれることが多い

Q: 中取りだけを単独で瓶詰めする理由は?

A: 主な理由は2つ:

  1. 中取りならではの純粋な味わいを堪能するため
  2. 他の部分とブレンドせず、最高品質をそのまま提供するため

Q: 中取り酒は長期熟成に向いている?

A: はい、以下の特徴から熟成向きです:

  • 雑味が少ないため味の変化が美しい
  • バランスが良いため熟成による味の調和が取れる
  • 透明感のある酒質が熟成でさらに深みを増す

Q: 中取り酒の適切な保存方法は?

A: 以下の点に注意:

  • 直射日光を避け冷暗所で保管
  • 温度変化の少ない場所が理想
  • 開封後は冷蔵庫で1ヶ月以内に飲み切る

中取り酒は日本酒の中でも特別な存在で、その価値を知れば知るほど楽しみ方が広がります。これらのQ&Aを参考に、中取りの魅力を存分に味わってください。

中取りの未来と最新トレンド

日本酒の「中取り」は、その品質の高さから近年さらに注目を集めており、以下のような最新トレンドが登場しています。

単独瓶詰め商品の増加

  • あらばしりや責めとブレンドせず、中取りだけを厳選して瓶詰めする商品が増加
  • ラベルに「中取り」と明記した商品が増え、消費者が選びやすくなっている
  • 720mlや300mlなどの小容量サイズも登場し、気軽に試せるようになった

プレミアム中取り酒の登場

  • 磯自慢の「中取り純米大吟醸35」のように、精米歩合35%という超高級仕様の商品が増加
  • 熟成酒「アダージョ」シリーズなど、時間をかけた特別な中取り酒が人気
  • グラッパボトルなどの特別な容器を使ったプレゼンテーションも注目されている

海外への輸出拡大

  • 日本酒全体の輸出額が2022年に474億円と過去最高を記録する中、中取り酒も輸出が増加
  • アメリカや中国を中心に、高品質な中取り酒の需要が高まっている
  • 現地の飲食店や小売店向けに、輸出専用の特別な中取り商品も開発されている

これらのトレンドから、中取りは今後さらに「日本酒の最高品質部分」としての地位を確立していくと考えられます。特に海外市場での成長が期待されており、日本酒の国際的な認知度向上にも貢献するでしょう。蔵元各社も中取り商品の開発に力を入れており、より個性的で高品質な中取り酒が登場する可能性があります。

中取りの未来と最新トレンド

日本酒の「中取り」は近年、以下のような注目すべきトレンドが生まれています。

単独瓶詰め商品の増加

  • 蔵元が中取り部分だけを厳選して瓶詰めする商品が急増
  • 720mlや300mlなど小容量サイズも登場し、気軽に試せるようになった
  • ラベルに「中取り」「中垂れ」と明記した商品が増え、消費者が選びやすくなっている

プレミアム化の進展

  • 精米歩合35%以下の超高級中取り酒が登場(例:磯自慢「中取り純米大吟醸35」)
  • 熟成専用の中取り酒(アダージョシリーズなど)が人気
  • 特別な容器(グラッパボトルなど)を使った高級感ある商品が増加

海外市場への展開

  • 2022年の日本酒輸出額474億円(過去最高)の中、中取り酒の輸出が拡大
  • アメリカ・中国を中心に高品質中取り酒の需要が急増
  • 輸出専用の中取り商品開発が活発化

これらのトレンドは、中取りが「日本酒の最高品質部分」としての地位をさらに確立している証と言えます。特に海外では、中取りの透明感とバランスの良さが「日本酒の真髄」として評価されつつあります。今後も蔵元各社が中取り商品の開発に注力することで、より個性的で高品質な中取り酒が登場することが期待されます。