特定名称酒 等級を知って日本酒選びをもっと楽しもう
日本酒のラベルを見ると、「純米大吟醸」や「特撰」など、さまざまな名称や等級が記載されていて、どれを選べばいいか迷った経験はありませんか？昔は「特級」「一級」「二級」といった等級制度がありましたが、現在は「特定名称酒」による分類が主流となっています。この記事では、特定名称酒と等級の基準や違い、そして自分に合った日本酒の選び方まで、詳しく解説します。
1. 特定名称酒とは何か？
日本酒のラベルをよく見ると、「純米酒」や「吟醸酒」、「本醸造酒」といった言葉を目にすることが多いですよね。これらは「特定名称酒」と呼ばれ、原料や精米歩合、製法など国が定めた一定の基準を満たした日本酒だけが名乗ることができる特別なカテゴリーです。
特定名称酒は、大きく「純米系」「吟醸系」「本醸造系」の３つの系統に分かれています。さらに、それぞれの系統の中で「大吟醸」「吟醸」「特別純米」「特別本醸造」など、全部で８種類に細かく分類されています。たとえば、「純米大吟醸酒」は、米と米麹だけを使い、特に精米歩合が低く（米をたくさん削る）、香りや味わいが繊細で上品な日本酒です。一方、「本醸造酒」は、米・米麹・醸造アルコールを原料とし、すっきりとした飲み口が特徴です。
このように、特定名称酒は原料や造り方、精米歩合などの違いによって味わいや香りが大きく異なります。ラベルに書かれた名称を知ることで、自分の好みやその日の気分に合った日本酒を選びやすくなります。ぜひ、特定名称酒の違いを意識して、日本酒選びをもっと楽しんでみてください。
2. 日本酒の等級制度の歴史
かつて日本酒には「特級」「一級」「二級」といった等級制度が存在し、これらは主に酒税法上の分類として導入されていました。この制度は1943年（昭和18年）に戦時下の経済統制と酒税確保を目的に始まり、戦後は「特級」「一級」「二級」の三段階が主流となりました。
等級の認定は国税庁の酒類審議会による官能検査で行われ、品質や味わい、アルコール度数などを基準にランク付けされていました。等級が上がるほど酒税も高く設定されていたため、消費者は「特級＝高級酒」と捉えて商品選びの目安にしていた時代もあります。
しかし、等級制度はあくまで税務上の分類であり、必ずしも品質の優劣を正確に反映するものではありませんでした1。時代が進むにつれ、酒蔵による等級離れや消費者からの疑問の声が高まり、品質の高い酒でもあえて二級酒扱いとする「無鑑査酒」が登場するなど、市場バランスが崩れていきました。
その結果、等級制度は次第に形骸化し、1992年（平成4年）に廃止されました。廃止後は、原料や精米歩合、製法などに基づく「特定名称酒」による分類が一般的となり、現在の日本酒選びの基準となっています。
このように、日本酒の等級制度は時代の変化とともに役割を終え、今ではより分かりやすく、品質や個性を重視した「特定名称酒」分類へと移り変わっています。
3. 現在の日本酒ランクの基準
現在の日本酒のランク付けは、かつての「特級」「一級」「二級」といった国による等級制度が廃止されたことにより、大きく変化しました。現在も「特撰」「上撰」「佳撰」といった呼称を目にすることがありますが、これは各メーカーや蔵元が独自の基準で設けているもので、全国共通の規格ではありません。たとえば、ある蔵元の「特撰」と別の蔵元の「特撰」では、品質や味わいの基準が異なる場合もあります。
一方で、業界全体として最も一般的なランク付けの基準となっているのが「特定名称酒」の分類です。特定名称酒は、原料や精米歩合、製法などの厳しい基準を満たした日本酒だけが名乗ることができ、「純米大吟醸酒」「大吟醸酒」「純米吟醸酒」「吟醸酒」「特別純米酒」「純米酒」「特別本醸造酒」「本醸造酒」の8種類に分かれています。これらの分類は、メーカーや蔵元を問わず全国共通の基準で決められているため、日本酒選びの際の信頼できる目安となります。
また、これらの特定名称酒に該当しないものは「普通酒」と呼ばれ、精米歩合や原料、製法に特別な制限がなく、より手軽に楽しめる日本酒として親しまれています。
このように、現代の日本酒ランクは「特定名称酒」を基準に考えるのが一般的です。ラベルをよく見て、どのカテゴリーに属しているかを確認することで、自分の好みやシーンに合った日本酒を選びやすくなります。メーカー独自の「特撰」「上撰」「佳撰」も参考になりますが、まずは特定名称酒の分類を基準に選ぶのがおすすめです。
4. 特定名称酒の８分類を解説
日本酒の「特定名称酒」は、原料や精米歩合、製法などの条件によって、全部で8種類に分類されています。この8つのタイプは、それぞれ特徴や味わいが異なり、日本酒選びの大きなヒントになります。
特定名称酒の8種類は以下の通りです。
- 純米大吟醸酒
- 純米吟醸酒
- 特別純米酒
- 純米酒
- 大吟醸酒
- 吟醸酒
- 特別本醸造酒
- 本醸造酒
この分類は、主に「原材料」「精米歩合」「製法」の違いで分けられています。
純米系（純米大吟醸酒・純米吟醸酒・特別純米酒・純米酒）は、米・米麹・水のみを原料とし、米本来の旨味やコクを楽しめるのが特徴です。精米歩合が低い（米を多く削る）ほど、雑味が少なく繊細な味わいになります。
吟醸系（大吟醸酒・吟醸酒）は、米・米麹・水に加え、醸造アルコールを使用することがあり、低温でじっくり発酵させる「吟醸造り」によって、華やかでフルーティーな香りが生まれます。大吟醸酒は特に精米歩合が50％以下と厳しい基準があり、より澄んだ味わいが特徴です。
本醸造系（特別本醸造酒・本醸造酒）は、米・米麹・水に加えて醸造アルコールを使用し、すっきりとした飲み口やキレの良さが魅力です。
それぞれのタイプは、原料や精米歩合、アルコール添加の有無、製法の違いによって個性が生まれます。ラベルを確認しながら、自分の好みやシーンに合った特定名称酒を選んでみてください。日本酒の世界が、きっともっと楽しく広がるはずです。
5. 普通酒と特定名称酒の違い
日本酒には「特定名称酒」と「普通酒」という大きな分類があります。特定名称酒は、原料や精米歩合、製法など国が定めた厳しい基準をクリアした日本酒のみが名乗ることができる、いわば“品質保証付き”の日本酒です。純米酒や吟醸酒、本醸造酒など、ラベルにこれらの名称が記載されているものが特定名称酒にあたります。
一方、これらの基準に該当しない日本酒は「普通酒」と呼ばれます。普通酒は、精米歩合や原料、製法に特別な制限がなく、醸造アルコールの添加量にも上限がありません。そのため、コストを抑えて大量生産しやすく、価格も比較的リーズナブルです。日常的に気軽に楽しみたい方や、晩酌用として親しまれているのが普通酒の魅力です。
ただし、普通酒だからといって品質が劣るというわけではありません。最近では、蔵元のこだわりが詰まった美味しい普通酒も増えてきています。特定名称酒は原料や造りにこだわった“特別な一杯”を楽しみたいとき、普通酒は“気軽に日本酒を楽しみたいとき”と、シーンや用途に合わせて選ぶのがおすすめです。
どちらにもそれぞれの良さがあるので、ぜひ両方を飲み比べてみて、自分の好みやライフスタイルに合った日本酒を見つけてください。日本酒の楽しみ方が、きっともっと広がりますよ。
6. 精米歩合と等級の関係
日本酒のラベルでよく見かける「精米歩合」という言葉。これは、お米をどれくらい削って使っているかを示す数値です。たとえば、精米歩合60％なら、玄米の外側40％を削り、残り60％を使って日本酒を仕込んでいることになります。
特定名称酒の分類では、この精米歩合がとても重要な役割を果たします。精米歩合が低い（＝お米をたくさん削る）ほど、雑味のもととなる部分が減り、よりクリアで繊細な味わいの日本酒になります。特に「大吟醸酒」や「純米大吟醸酒」は精米歩合50％以下と定められており、贅沢にお米を削ることで、華やかな香りや上品な味わいが生まれます。
逆に、精米歩合が高い（＝あまり削らない）日本酒は、お米の旨味やコクがしっかり残り、しっかりとした味わいを楽しめます。精米歩合の違いは、等級や特定名称酒の分類だけでなく、味や香りの個性にも大きく影響します。
精米歩合は日本酒の品質や等級を知るうえでとても分かりやすい指標です。ラベルに記載されている数値をチェックしながら、自分の好みやその日の気分に合わせて選ぶと、日本酒選びがもっと楽しくなります。ぜひ、精米歩合にも注目して、いろいろな日本酒を味わってみてくださいね。
7. 「特撰」「上撰」「佳撰」とは？
「特撰（とくせん）」「上撰（じょうせん）」「佳撰（かせん）」は、日本酒のラベルでよく見かける等級表記ですが、これは蔵元やメーカーが独自に設けたランクです。かつて日本酒には「特級」「一級」「二級」といった国による級別制度がありましたが、1992年にこの制度が廃止された後、消費者が混乱しないように、蔵元ごとに「特撰」「上撰」「佳撰」といった表現が使われるようになりました346。
この3つの呼び名には、法的な基準や全国共通の規格はありません。あくまで各メーカーや蔵元が自社のお酒を区分するための「当社比ランク」となっており、「佳撰」より「上撰」、「上撰」より「特撰」が上位という位置づけです456。たとえば、同じ蔵の「特撰」と「佳撰」では、特撰の方がより品質や価格が高い傾向があります。
また、これらの表記は特定名称酒ではなく、普通酒に使われることが多いですが、蔵によっては本醸造酒など特定名称酒に使用する場合もあります5。他にも「超特撰」や「金撰」「銀撰」など、独自のランク付けを設けている蔵も存在します75。
このように、「特撰」「上撰」「佳撰」は、蔵元独自の品質基準を示す目安です。全国共通の基準ではありませんが、同じ銘柄内での飲み比べや、予算・シーンに合わせた選び方の参考になります。ラベルを見て気になったら、ぜひそれぞれの味わいの違いも楽しんでみてください46。
8. 酒米の等級と特定名称酒の関係
日本酒の味わいを左右する大切な要素のひとつが「酒米（さかまい）」です。実は、特定名称酒を造るためには、使用する酒米にも基準が定められています。特定名称酒には「三等米以上」に格付けされた酒米しか使えません。
酒米の等級は、農産物検査法に基づいて「特等」「一等」「二等」「三等」「規格外」といったランクで評価されます。この等級は、米粒の大きさや整粒率（割れや欠けのない粒の割合）、外観や品質など、さまざまな基準で決まります。特等や一等の酒米は粒が大きく、雑味の原因となるタンパク質や脂質が少ないため、繊細でクリアな味わいの日本酒ができやすいのが特徴です。
特定名称酒に三等以上の酒米が使われる理由は、安定した品質と美味しさを保つため。等級が高い酒米ほど、精米しても割れにくく、きれいに磨くことができるので、吟醸酒や大吟醸酒など、香りや味わいにこだわった日本酒造りに最適です。
一方、普通酒では規格外の酒米や食用米が使われることもありますが、特定名称酒は必ず三等以上の酒米を使用するというルールがあるので、品質面でも安心して選ぶことができます。
このように、酒米の等級は日本酒の品質や味わいに大きく関わっています。ラベルや蔵元の説明に「特等米使用」などと書かれていたら、ぜひ注目してみてください。酒米の違いを知ることで、日本酒選びがさらに楽しくなりますよ。
9. 特定名称酒の味わいの違い
特定名称酒にはさまざまな種類がありますが、それぞれに個性豊かな味わいがあり、日本酒の楽しみ方を広げてくれます。
まず「純米酒」は、米と米麹、水だけで造られているため、米本来の旨味やコクがしっかり感じられるのが特徴です。ふくよかで力強い味わいは、和食はもちろん、味の濃い料理とも相性が良く、温度を変えて楽しむのもおすすめです。
「吟醸酒」や「大吟醸酒」は、精米歩合を高くし、低温でじっくり発酵させることで生まれる華やかな香り（吟醸香）と、繊細でなめらかな味わいが魅力です。フルーティーで上品な香りは、冷やしてそのまま飲んでも、ワイングラスで香りを楽しむのも素敵です。特に「大吟醸酒」は、より贅沢に米を磨き上げて造られているため、雑味が少なく、透明感のある味わいが際立ちます。
「本醸造酒」は、米・米麹・水に加えて、少量の醸造アルコールを加えて造られます。これにより、すっきりとしたキレの良い飲み口が生まれ、食中酒として幅広い料理と合わせやすいのが特徴です。冷やしても燗にしても美味しくいただける、バランスの良さが魅力です。
このように、特定名称酒は種類ごとに香りや味わい、飲み口が大きく異なります。ぜひいろいろなタイプを飲み比べて、自分の好みやシーンに合った日本酒を見つけてみてください。きっと日本酒の世界が、もっと楽しく、奥深く感じられるようになりますよ。
10. ラベルの見方と選び方のコツ
日本酒を選ぶとき、ラベルに記載されている情報はとても大切なヒントになります。特定名称酒の場合、ラベルには「純米大吟醸」「吟醸」「本醸造」などの名称や、精米歩合、使用米、アルコール度数、さらにメーカー独自の「特撰」「上撰」といった等級も記載されていることが多いです。
まず注目したいのは「特定名称」です。これによって、そのお酒がどのような原料・製法で造られているかが分かります。たとえば「純米吟醸」と書かれていれば、米・米麹・水だけで、吟醸造りの手間をかけていることが分かります。
次に「精米歩合」。数字が小さいほどお米をたくさん削って造られており、繊細で上品な味わいが期待できます。反対に精米歩合が高めなら、米の旨味やコクがしっかり感じられるタイプです。
また、原料米や産地、酵母の種類などが書かれている場合もあります。これらは味わいの個性を知る手がかりになるので、気になる銘柄があればメモしておくと、次に選ぶときの参考になります。
メーカー独自の等級（特撰・上撰・佳撰など）は、同じ蔵の中での品質の目安として活用できます。
選び方のコツは、自分の好みや飲みたいシーンに合わせてラベルをチェックすること。たとえば、特別な日に華やかな香りを楽しみたいなら「大吟醸」や「吟醸」がおすすめ。食事と一緒に楽しみたいなら「本醸造」や「純米酒」など、飲み方や料理に合わせて選ぶと、より日本酒の魅力を感じられます。
ラベルの情報を上手に活用して、自分だけのお気に入りの一本を見つけてみてくださいね。日本酒選びがもっと楽しく、奥深いものになりますよ。
まとめ
特定名称酒と等級の違いを知ることで、日本酒選びはより楽しく、奥深いものになります。かつての等級制度と違い、現在の日本酒は「特定名称酒」として、原料や精米歩合、製法などの明確な基準で分類されています。ラベルに記載された「純米大吟醸」「吟醸」「本醸造」などの名称や、精米歩合、原料米、メーカー独自の等級表示を参考にすることで、自分の好みやその日の気分、シーンにぴったり合った日本酒を選びやすくなります。
また、純米酒の米本来の旨味や、吟醸酒の華やかな香り、本醸造酒のキレの良さなど、種類ごとの個性を意識して飲み比べてみるのもおすすめです。精米歩合や酒米の等級、蔵元のこだわりなど、ひとつひとつに注目してみると、日本酒の世界がどんどん広がっていきます。
ぜひ、いろいろな特定名称酒を味わいながら、自分だけのお気に入りの一本を見つけてください。日本酒の魅力を知ることで、日々の食卓や特別な時間が、もっと豊かで楽しいものになりますように。